Monadとは
Monad は、1 秒のファイナリティで1 秒あたり最大 10,000 件のトランザクションを処理できるするEVM互換のLayer1プロダクトです。
Monad Labsは金融大手Jump Tradingの研究責任者であったKeone HonとEunice Giartaによって設立され、Dragonfly Capital 、Placeholder Capital、Lemniscap、Shima Capital、Finality Capital を含む他の投資家 70名からシード資金として1900万ドルを調達したプロジェクトです。
従来の金融機関がブロックチェーンの領域に入り込めない理由として、Ethereumを始めとするLayer1のパフォーマンス不足を指摘し、従来の金融システムに匹敵するLayer1を作成することを目標にしています。
Ethereumは、依然としてLayer1の市場シェアの大部分を保持しています。
より伝統的な金融機関がブロックチェーンの分野に参入するにつれて、注目はブロックチェーンのスケーラビリティと速度にますます変わってきています。
Monad のチームは、このチャンスを利用して、Layer1 ブロックチェーンの改良版を構築しようとしています。Jump (金融機関) 出身の創設チームを持つMonad Labsはスピードの必要性を理解しており、従来の金融システムのパフォーマンスに匹敵するブロックチェーンネットワークを構築しているところです
Eunice Giarta, Monad Labs共同創業者 COO
Monadの特徴
Monadは、EVM互換性のある10000 TPSと1秒のファイナリティを提供するLayer1です。
このハイパフォーマンスを実現する技術について説明します。
MonadBFT
Monadは、BFTをベースしたコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
Byzantine Fault Tolerance (BFT) アルゴリズムでは、ラウンドにおいてValidatorの1つがリーダーとして選択され、トランザクションのproposeを行います。
リーダに選出されなかった他のValidatorが、リーダーがProposeしたトランザクションが正しいかを確認することによりトランザクションの判定を行うコンセンサスアルゴリズムを採用しています。
また、MonadBFTは、Jolteon / DiemBFT / Fast-HotStuffで提案された改良を施したHotStuffの派生型であり、
新興Layer1であるAptos, Suiと同様の技術を用いて開発されたアルゴリズムです。
並列実行 : STM採用
因果関係のないトランザクションを並列処理することにより、Monadでは最大10,000TPSの処理能力を提供します。
一方で、並列実行による不具合もあります。
- Tx A : アカウント A がアカウント B から 100 Monadトークンを受け取るトランザクション
- Tx B : アカウント A がアカウント C に 100 Monad トークンを送信するトランザクション
アカウントAのMonadトークンが0である状態で、これら 2 つのトランザクションが順次ではなく並行して処理される (トランザクション A が終了する前にトランザクション B が開始される) と仮定します。
Ethereumの順次処理ではTx Aを処理してからTx Bを処理するためエラーにはなりませんが、並列処理の場合にはTx AとTx Bには依存関係があるため (アカウントにMonadトークンが0であるため、Tx Aのトークン受信を実施してからでないと送信できないため) エラーが発生してしまいます。
Monadでは、この問題に対して楽観に実行処理 (全てのトランザクションが依存関係がないと仮定して並列実行) を行い、依存関係がありエラーになったTxを再実行していくことで順次的な処理より、早く処理できるようになります。
Txが10個あり、TX1 → TX2 → TX3 → {TX4, TX6, TX9}の順序で処理しないといけない依存関係があるケースにおいて、4並列実行する例を考えてみます。
stage-1 (最初の実行では)楽観的に、TX1 , TX2 , TX3 , TX4 を実行し、依存関係があるためTX1 のみ成功し TX2 , TX3 , TX4 は失敗します。
stage-2 (2回目の実行では)、TX2 , TX5 , TX7 , TX8 を実行し、依存関係があるためTX2 , TX7 TX8 が成功し TX5は失敗します。
stage-3 (3回目の実行では)、TX3 , TX10を実行し、TX3 , TX10が成功します
stage-4 (4回目の実行では)、TX4 , TX6 ,TX9を実行し、TX4 , TX6 ,TX9が成功します
このな複雑な依存関係がある場合においても、逐次処理 (一つのStageで一つのtxs処理)では10回かかるところを、並列実行では4回の処理で終わり処理時間を最短化することができます。
EVM互換
Monadの最大の特徴は、高パフォーマンスなEVMチェーンという点です。
並列処理という観点ではSei、Aptos、Suiと同様、コンセンサスアルゴリズムではAptos、Suiと同種の技術を取り入れており、いずれのプロジェクトにおいてもブロックチェーンのパフォーマンスを最大化するという点においては共通項目になっています。
一方で、Monadの最大の特徴はEthereumのエコシステムの強さと新興L1チェーンを実現している技術を巧みに融合させている点です。
Sei、Sui、Aptosが独自の言語とVM(SeiはWASM、SuiとAptosはMove)を選択したのに対し、MonadはEVMを選択しました。
EVMを選択したことにより、Ethereum向けに作成されたスマートコントラクトや開発したアプリケーション (Webサイト) を簡単にMonad用に対応することができます。
EVM対応は、開発者の 30% が複数のチェーンで開発をしている一方で、同様の技術スタック内 (EVM系、Polkadot系、Cosmos系)での展開に留まっている傾向もも追い風になっています。
Token情報
Monadでは、tokenomics (仮想通貨の供給、需要、流通、評価に関する情報)が出ていないため発行の有無についても不明な状況です。
しかしながら以前の技術ドキュメントにおいてはMONと言われるトークンの記述があったことから
将来的にはトークン発行の可能性が高いと思われます。
同様の技術を用いているSei, Suiを参考にすると時価総額が$1,500,000,000 程度 (2024年2月3日 CoinGecko) であり、意識される指標になるを想定されます。
まとめ
Ethereum L2が注目を浴びている一方で、実現可能なTPSは1000 ~ 5000 TPSとSolanaや新興L1とは低い数値になっています。
また、ガス代やファイナリティも快適とは言えないパフォーマンスとなっています。
一方で、Ethereumとの互換性が十分に確保されているため、Uniswapなどの有名Dappsは多数のEVMへのサポートをしています。
今後、L2でのTxsが逼迫した際に、よりパフォーマンスがよく低いガス代で利用しやすいMonadをサポートするDappsも増えていき、利用者も増えていくとEVM版Solanaとしての立ち位置を確保していく可能性もあります。
技術スタックとしては、Sei、Sui、Aptosなどの新興Layer1と同等の箇所があるものの、エコシステムの発展性の観点からすると大いに強みのあるプロジェクトとなっています。
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